MY FAVORITE ALBUM 50-1

 

50.Base Ball Bear『C2』 (2015)

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49.フジロッ久(仮)『超ライブ』 (2016)

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48.佐野元春COYOTE』 (2007)

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47.Fishmans『ORANGE』 (1994)

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46.くるり『ワルツを踊れ Tanz Walzer』 (2007)

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45.台風クラブ『初期の台風クラブ』 (2017)

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44.サニーデイ・サービス『DANCE TO YOU』 (2016)

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43..Cellophane『Balloon Songs』 (1998)

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42.ミツメ『Ghosts』 (2019)

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41.GOMES THE HITMAN『weekend』 (1999)

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40.□□□『ファンファーレ』 (2005)

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39.スピッツハヤブサ』 (2000)

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38.Lamp『恋人へ』 (2004)

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37.advantage Lucy『ファンファーレ』 (1999)

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36.ZABADAK『はちみつ白書』 (1998)

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35.高橋徹也夜に生きるもの』 (1998)

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34.カネコアヤノ『燦々』 (2019)

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33.サニーデイ・サービス『東京』 (1996)

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32.GOMES THE HITMAN『down the river to the sea』 (1998)

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31.川本真琴川本真琴』 (1997)

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30.サラダ『20の頃の話』 (1996)

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29.microstar『microstar album』 (2008)

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28..the pillows『Thank you,my twilight』 (2002)

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27.Theピーズ『とどめをハデにくれ』 (1993)

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26.七尾旅人『オモヒデ オーヴァ ドライブ』 (1998)

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25.andymoriandymori』 (2009)

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24.Fishmans『空中キャンプ』 (1996)

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23.シュガー・ベイブ『SONGS』 (1975)

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22.ラッキー・オールドサン『Belle Epoque』 (2017)

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21.安藤裕子『chronicle.』 (2008)

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20.Flipper's Guitar『カメラ・トーク』 (1990)

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19.Cymbals『That's Entertainment』 (2000)

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18.Tomato n'Pine『PS4U』 (2012)

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17.住所不定無職『GOLD FUTURE BASIC,』 (2013)

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16.Lamp『ゆめ』 (2014)

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15.Fishmans『宇宙 日本 世田谷』 (1997)

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14.andymori『ファンファーレと熱狂』 (2010)

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13.スピッツ『名前をつけてやる』 (1991)

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12.GOMES THE HITMAN『cobblestone』 (2000)

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11.サラダ『meat the salad』 (1997)

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10.小沢健二『LIFE』 (1995)

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9.the pillows『Please Mr.Lostman』 (1997)

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8.柴田聡子『がんばれ!メロディー』 (2019)

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7.曽我部恵一『STRAWBERRY』 (2004)

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6.ザ・なつやすみバンド『PHANTASIA』 (2016)

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5.山田稔明『新しい青の時代』 (2013)

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4.中村一義『金字塔』 (1997)

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3.シャムキャッツ『AFTER HOURS』 (2014)

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2.小沢健二犬は吠えるがキャラバンは進む』 (1993)

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1.中村一義『太陽』 (1998)

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MY FAVORITE ALBUM 100-51

100.スガシカオ『Clover』 (1997)

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99.OK?NO!!『Party!!!』 (2013)

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98.Chappie『NEW CHAPPIE』 (1999)

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97.フジファブリックフジファブリック』 (2004)

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96.星野源『エピソード』 (2011)

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95.ハンバート・ハンバート『道はつづく』 (2006)

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94.Enjoy Music Club『FOREVER』 (2015)

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93.花柄ランタン『まともな愛のま、まほうの愛のま。』 (2017)

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92.the heys『優しい終わり』 (1999)

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91.THE GROOVERS『ELECTRIC WHISPER』 (1997)

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90.土岐麻子『PINK』 (2017)

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89.空気公団『融』 (2001)

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88.ブレッド&バター『Barbecue』 (1974)

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87.ゆらゆら帝国『3×3×3』 (1998)

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86.Mr.Children『KIND OF LOVE』 (1992)

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85.シャムキャッツ『たからじま』 (2012)

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84.ROUND TABLE fearturing Nino『Nino』 (2006)

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83.キリンジ『ペイパー・ドライヴァーズ・ミュージック』 (1998)

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82.cero『WORLD RECORD』 (2011)

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81.高橋徹也ベッドタウン』 (1998)

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80.GARNET CROW『first soundscope ~水のない晴れた海へ~』 (2001)

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79.GARNET CROW『first kaleidscope ~君の家着くまでずっと走ってゆく~』 (1999)

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78.シャムキャッツ『TAKE CARE』 (2015)

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77.毛皮のマリーズ 『ティン・パン・アレイ』 (2011)

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76.BOaT『RORO』 (2001)

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75.初恋の嵐『初恋に捧ぐ』 (2002)

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74.BUGY CRAXONE『Joyful Joyful』 (2012)

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73.the pillows『RUNNERS HIGH』 (1999)

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72.スーパーカー『スリーアウトチェンジ』 (1998)

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71.くるり『図鑑』 (2000)

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70.神森徹也 『GREATEST HITS』 (1995)

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69.サニーデイ・サービスサニーデイ・サービス』 (1997)

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68.Negiccoティー・フォー・スリー』 (2016)

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67.Mr.Childre『REFLECTION』 (2015)

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66.松田聖子『SEIKO STORY〜80's HITS COLLECTION〜』 (2011)

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65.aiko時のシルエット』  (2012)

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64.曽我部恵一BAND『LIVE』  (2005)

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63.CARNATION『EDO RIVER』 (1994)

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62.Special Favorite Music『World's Magic』 (2016)

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61.スピッツ『ハチミツ』 (1995)

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60.阿佐ヶ谷ロマンティクス『街の色』 (2017)

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59.井上陽水『氷の世界』 (1973)

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58.My Little Lover『Topics』 (2001)

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57.b-flowerb-flower』 (1998)

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56..THE CHEWINGGUM WEEKEND『KILLING POP』 (1998)

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55.THE GROOVERSRosetta Stone』 (1995)

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 54.SPORTS『PUZZLE』 (2006)

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53.曽我部恵一BAND『キラキラ!!』 (2008)

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52.BUGY CRAXONE『いいかげんなBlue』 (2013)

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51.平賀さち枝『さっちゃん』 (2011)

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50位~1位:MY FAVORITE ALBUM 50-1

シャムキャッツというバンドについて

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もうすぐ平成が終わるらしい。
にも関わらず自分は、いつも通りひび割れたウォークマン小沢健二を聴いていて、自分で自分にゾッとした。90年代への憧れの精算できなさに。

でもやっぱり、90年代の小沢健二中村一義こそが自分にとってのカルトヒーローで、いつまでも特別な存在として居座り続けてるんだからしょうがない。

と、平成6年生まれの自分がそんなステレオタイプな90'sボーイになってしまうのもいかがなものかと思いつつ、10代後半という最も感性豊かな時期に、リアルタイムで確かに''本当のこと''を歌ってると実感できたのが、andymoriシャムキャッツくらいしかいなかったのだからしょうがないと開き直りたい気分。

とは言え、いつまでも失われたものに幻想を抱いていられないので、精算とは言わないまでも、自分の中の正史を整理しようと思う。現代に鳴らされるシャムキャッツという新たなヒーローにフォーカスを当てながら。

90年代に鳴らされる音楽は、ニヒリズムとどう向き合うかという主題が確かにあって、そんな時代で最も偉大な宣言が、中村一義の「ただ僕らは絶望の''望''を信じる」だったと思うのだ。



では、00年代以降そんな主題が消え去ったのは何故だろうか。
きっと僕らは慣れ過ぎたのだ。もはや「失われた10年」なんてもんでもないし、「大きな物語」なんて、消え去ったのすら今や遠い昔の話。生きてる実感すらもなければ、虚無や悲しみすらも痛覚麻痺で感じられない。『SAPPUKEI』に『空洞です』、なんて端的で象徴的やタイトルだろうか!絶望がなけりゃその''望''すらも信じられない、そんな時代だ。

では、そんな時代に鳴らされる音楽で、最も有効な宣言は何だろうか。

それこそが、シャムキャッツの、
「僕らは愛を片隅で抱いていようかなと思ってるところ」だと思うのだ。



そしてそんな宣言は、
10年代以降の所謂''シティポップ''ムーヴメントと強く結びついてるように思う。

ここでいうシティポップとは、都会的で洗練されたグッドミュージックのことではなくて、郊外を含む都市の営みを描くことで何かをあぶり出そうとする試みのこと。とても乱暴に言うならば、一十三十一やLucky Tapesのことではなく、ceroの『街の報せ』やthe chef cooks meの『環状線は僕らを乗せて』や阿佐ヶ谷ロマンティクスの『街の色』というアルバムのことだ。

政治も信用できないし、何だか世の中歪みまくってるけど、とりあえずそれぞれが自分たちの生活を見つめ直して大切にしようぜ、だってそれしか確かなことってないっしよ?的な運動だ。
そして、そんな運動に拍車をかけたのが、震災というさらに大きな歪みだったと思う。

『everyday is a symphony』というアルバムで上記のようなシティポップに先鞭をつけたクチロロが、『いつかどこかで』という決定的な大傑作を産み出したのも、シャムキャッツを確実に次のフェイズに押しやったのも間違いなくこの歪みであったはず。

だって、シャムキャッツの最高傑作、いや、2010年代の最高傑作『AFTER HOURS』は、震災がなかったらきっと生まれていないから。
液状化した浦安を舞台に、市井の男女が織りなすささやかな10枚のシークエンス。

このアルバムの夏目知幸のリリックは、革新的と言っても大げさじゃないと思うのだ。
こんなにも、神の視点と一人称をシームレスに行ったり来たりする歌詞があっただろうか。
このアルバムでの夏目知幸は、ありふれた風景を丁寧に掬い取るストーリーテラーであり、現代を生きる僕らに何かを伝えようとするメッセンジャーなのだ。

リードシングル『MODELS』では、同棲するトラックドライバーの彼氏と会社員の彼女を描きながら、サビで次のように歌われる。

小鳥がさえずり僕らの目覚めを促す頃
なるべく長く続ける為にはちょっとした
工夫もいるんだなんてこと
若いなりに彼は考えている

 
流れていく時間の中で終わって行くもの、変わって行くこと。それでも自分たちの生活を続けて行くこと。
そんな、現代で最も大切なことが描かれている。

神様を信じる強さとか、朝が来る光とか、そんなものを信じられない時代でも、世界の片隅で一人一人が愛を抱きながら生活すること。
それこそが、生きることを諦めてしまわないための最良の選択肢なのだと。

荒々しいグルーヴやコンセプチュアルな作品性を手放して、よりシンプルな形で、瞬間的でフラジャイルな煌めきにフォーカスを当てた『Friends Again』



その音に、ヴォーカルに、リリックに、耳を澄ませてもらえれば、言葉にならないフィーリングがきっと伝わるはず。

「僕らは愛を片隅で抱いていようかなと思ってるところ」という宣言から約8年、形式とニュアンスを変えながら、それでもいつだってそんな宣言が確かに通底していて、だからこそ僕はいつだってシャムキャッツというバンドに何かを託してしまいたくなる。

最後に、シャムキャッツ史上最もストレートなロックバラード『マイガール』から、何度聴いても涙腺が緩んでしまう一節を引用して締めくくりたいと思います。

だいたい世の中は暗い?
つらいことばっかり?
ヒルなやつはいいね
楽しそうにしているさ

それはそれで マイガール
こっちにおいで マイガール
ちょっとあったまるだけ
それがいいさ マイガール

過剰なエモーショナルもナルシズムに似た諦念もクソくらえだ。 
この世の全てのポップミュージックがこんな気持ちをこめて歌われていればいいなと僕は思ってしまいます。

ザ・なつやすみバンド『PHANTASIA』

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ザ・なつやすみバンドの最新作『PHANTASIA』が本当に素晴らしくて、今年の夏は常に心の中心にこのアルバムがありました。
僕らは忘れていく生き物だから、いつかこのアルバムを聴いたときの感動も忘れてしまうのかなーと思いながら、「いやいや!忘れてたまるものか!」「僕はなに一つ忘れないでいたい!」(GOMES THE HITMAN『長期休暇の夜』、名曲です)と思い、誰あろう自分のためにこの記事を書くことにしました。
 
このアルバムを端的に表すフレーズ
忘れそうなことをぜんぶ しまっておける魔法の装置を起動させることば
このアルバムはつまりそういう装置のこと。
このアルバムには、夕暮れの余韻や、ご飯が出来て嬉しそうな君や、そんな忘れてしまいそうな、けれどかけがえのない瞬間が収められています。
みずみずしい恋心が、宇宙さえも突き抜けるような全能感につながっていくあの瞬間も。



と、このアルバムには過去のかけがえのない記憶が沢山詰まっていて、時に甘く感傷的な気分に誘われてしまう。
けれどこれを単なるノスタルジアや懐古主義だと思うなかれ。もちろん、「毎日がなつやすみだったらいいのにな」というコンセプトを掲げてきたバンドらしく、刹那や郷愁が音や言葉に溢れているのだけれど、その目線はあくまで今に向けられているではないか。これは過去と今をつなぐアルバムだ。
 
なつやすみバンドがこのアルバムで歌っているのは、忘れ去られた過去の記憶(=今まで歩んできた道のり)もきっと今を照らしているということだ。そう、星の明かりが遥かな時を超え今の僕らに届くように。
ウミネコの声と追い風に
揺れるのは未来と過去
終わりと始まりがきらめいた!
大人になったら見えた魔法がある!
また、そんな過去の記憶(=今まで歩んできた道のり)は時に、今の自分だけでなく誰かを照らす瞬間がある。
そうして紡いだ点と線は誰かにとっての道しるべ
はなればなれのセンテンスがあなたで交わるシノプシス
『PHANTASIA』はそんなある種の生の肯定を、夏休みという世界の中に描いたこの世にたった一つのアルバムだ。でもそんな堅苦しい言葉このアルバムには似合わないな。時に郷愁や感傷に引っ張られながらのんびりダラダラと聴くのがよく似合う。以前より格段に広がりを持った音に、中川理沙さんの夏の優しい風のようなボーカルがふわっと乗ると、スチャダラパーよろしく「あれ、なんかいい風」と言ってしまいたくなるではないか。
 
このアルバムの中から好きな曲を一つだけ選べと言われたら、『GRAND MASTER MEMORIES』かな。というか、多分この曲について書きたいっていうのがこの記事を書いた最初の動機。そのくらい好きで、本当に聴くたび泣きそうになってしまうのだ。
子供の頃の夏休みに見た光景がそのままの形で目一杯詰め込まれてるじゃないですか。パクチーの味も子供がどこからやってくるのかも知らなかった僕らが見てたのはきっとこんな世界。「学級閉鎖まであと一人」とか、なんて絶妙なんでしょう。
 
しかし僕たちは大人になるにつれてそんな光景をどんどん忘れていく。今ではパクチーの味も子供がどこからやってくるのかもちゃんと知っているけれど、それと引き換えに失ったものも沢山ある。あの頃の僕らの声はだんだんと遠くなってしまう。
でも、ここで歌いたいのはそんな甘ったれた喪失なんかじゃない。だって、寂しいけど、寂しいけど、きっとそんなの嘘なんだもん。忘れたはずの何かも、きっとどこかに残されてる。それは記憶の片隅かもしれないし音楽の中かもしれない。
この曲で最後に何度も繰り返されるのは「全部忘れるなよって」という過去そしてなつやすみバンドから、今の僕らへの語りかけ。ズルいよそんなの。泣いちゃうに決まってるじゃん。
 
僕が今まで本当に泣きそうになった曲を一つ挙げろと言われたら、クチロロの『いつかどこかで』になるわけで、そういう、本来見過ごされていく、忘れられていくはずの瞬間を収めた曲にどうも弱いみたい。もはやポップミュージックはそういう瞬間を掬い取る為にあるという気にすらなってきます。

なつやすみバンドの1stの名ライン「世界が忘れそうなちっぽけなこともここでは輝く」。今でもそのラインが生きていて、僕はそんな音楽をいつだって大事にしていきたいと思ってしまいます。
その他にも、嫁入りランドのあっけらかんとしたあどけない声のラップや、アウトロのフルートの音色など、あの頃の夏と今をつなぐ素晴らしい音に溢れてる。
 
人生最後の夏休み(なんて感傷的でナルシスティックな言い様!)に、このアルバムに出会えてよかったなーなんて思います。きっとこれから今まであった大事なこといっぱい忘れてくんだろうね。そんなことに心を痛めたら、すかさずこのアルバムを手にしようと思います。
 
最後に、今まで書いた戯言や能書きの全てを超越するような、フレーズを引用したいと思います。
触れた瞬間 理屈も超えてゆくなら
限られた時間でも ここにいる意味はあるでしょう? 
なんてこった!ポップミュージックが存在する理由そのものじゃないか!と、大袈裟に驚いてみても良いのではないでしょうか。
 
 
P.S.
8/20.21にピーナッツキャンプというフェスに行ってきました。
朝っぱらから青空の下ビール片手に聴くなつやすみバンド最高でした。もちろんこのアルバムからのナンバーも良かったんだけど、S.S.Wが素晴らしかった。いつまでたっても大人になれずに夏休みと週末を行き来する僕らのとっておきのアンセムだ。
全然関係ないけどサニーデイトモフスキーヒックスヴィルなどもとても良かったし、スチャダラパーサマージャムを聴けたのは本当に嬉しかった。そんな夏の思い出でした。